俺の再教育プログラム

女児服に閉じ込められた羞恥

「このままじゃ、あの子はダメになるわ」

母さんが何度もそう言っていたのを覚えている。俺は別に、そんなに悪いことをしているつもりはなかった。ちょっと先生に口答えしたり、宿題をやらなかったり、ゲームに夢中になって朝起きられなかったり。そんなの、俺の周りのやつらも同じだった。なのに、どうして俺だけこんなことになったんだろう。

両親が見つけたのは、とある「再教育施設」だった。普通の寮じゃない。そこでは、幼児教育をもう一度やり直すらしい。つまり、中学生の俺が、幼稚園からやり直すってこと。しかも、卒園生の感想には「素直でいい子になれました」「自分を見つめ直す機会になりました」なんて書かれていた。

母さんも父さんも、その感想を食い入るように読んで、何度も頷いていた。そして俺に向かって、「ここならきっと更生できるわ」と言った。更生って何だよ、犯罪者みたいに。そう言い返したかったけど、言えば絶対に怒られるから、黙っていた。

そして決まった、来週からの入園。

でも、その施設には、ひとつ「特別なルール」があった。

――全員、女児の格好をすること。

「かわいらしさを学ぶことで、素直で優しい心を育てます」

説明会でそう言われたとき、俺は耳を疑った。でも、母さんも父さんも、納得したように頷いていた。の意思なんて、最初から関係なかった。

そして、今日。入園の準備として、俺は母さんと父さん、施設の職員と一緒に買い物に来ていた。
職員から長いウィッグを渡された。

「今日は仮で私が選んだウィッグも持ってきたよ。でも園に入ったら好きなのを選んでね!」

長い髪の毛が鬱陶しい…。

近所のモールに着いた。今日はいつもの買い物とは違う。入った店の中には、俺の知っている服なんて一つもなかった。

レースがふんだんに使われた白いワンピース。袖口に小さなフリルがついた淡いピンクのカーディガン。透けるほど薄い、だけどしっとりと肌に吸い付くようなタイツ。
どれも俺のものになるらしい。

「かわいいわね。これなんてどう?」

母さんが差し出したのは、胸元にリボンのついたセーラーカラーのワンピースだった。ほんのりと光沢があって、触ると滑らかで指がすべる。まるで水面をなでているみたいだった。

「……これ、俺が着るの?」

返事をするのが怖かった。店員さんが俺の顔をちらりと見て、微笑む。その視線がくすぐったくて、足の先からじんじん熱くなる。逃げ出したい。でも、逃げられない。母さんと父さんは、真剣な顔をしていた。

「これからお世話になる施設では、みんなこういう服を着るのよ。かわいらしい子になれるように、って」

かわいらしい子。俺はそんなのになりたくない。でも、反論したらまた怒られる。いつもの「どうしてあなたは言うことを聞けないの?」が始まる。だから俺は唇を噛んで、セーラーワンピをそっと握った。

隣では、職員の女性が化粧品のセットを選んでいた。小さなリップクリーム、ほのかに桃色のパウダー、細く繊細なアイライナー。鏡に映った俺の顔は、なんだかぼやけて見えた。

「心配しなくても大丈夫!明日からかわいくなろうね!」

優しい声。でも、どこか冷たく響くその言葉に、俺の心臓はひどく騒いでいた。


甘い香りと諦めの瞳

施設の門をくぐった瞬間、胃のあたりがぐっと重くなった。昨日までの生活とはすべてが違う。

「さあ、入りましょう」

職員に背中を押されながら、僕は足を引きずるように進んだ。建物の中に入ると、ふわりと甘い香りが鼻をかすめた。どこかのお店で嗅いだことがある。……ああ、思い出した。化粧品売り場の匂いだ。

廊下を進むと、開け放たれた部屋の中から数人の”女の子”が現れた。いや、それは“元”男の子たちだった。

――えっ……。

目の前の光景に、思わず息が詰まった。

フリルたっぷりのワンピース、綺麗に揃えられた長いウィッグ、ふんわりとしたスカートの裾からのぞく白いタイツ……。一人残らず、完璧に「女の子」になっていた。いや、正確には“させられていた”んだろう。でも、彼らの表情にはどこか諦めの色がにじんでいた。

「ねえ、新入りさん?」

目が合ったのは、一人の生徒?園児?だろう。胸元にリボンのついたクリーム色のワンピースを着て、きちんと結ばれたハーフアップの髪を揺らしていた。顔にはほのかにメイクが施され、唇には淡いピンクのツヤがある。……でも、その目だけは、僕と同じ絶望を浮かべていた。

「最初はね、びっくりしちゃうよね。でもね、大丈夫、すぐ慣れるからぁ」

にこっと微笑むその顔は、一見すると優しげだった。でも、瞳の奥に沈んだ諦めの色が、余計に僕をゾッとさせた。

「さ、着替えましょうね」

職員の女性が微笑みながら手を引いた。その手は優しいけれど、逃げられない力がこもっていた。

着替えの部屋に連れて行かれると、僕の制服は容赦なく脱がされた。そして、昨日買ったワンピースを手渡された。

「さあ、どうぞ」

拒否権なんてない。僕は震える手で、ラベンダー色のワンピースを持ち上げた。つるりとした生地が手のひらを滑る。こんなの、着たことない。なのに、今から“僕の服”になる。

袖を通すと、柔らかな布が肌にまとわりついた。首元のリボンが、妙に胸を締め付ける。スカートの裾がふんわり広がる感触が、足元からじんじんと羞恥を運んでくる。

「似合いますよ。はい、次はタイツですね」

「……えっ」

渡されたのは、白くて透けそうなくらい薄いタイツだった。こんなの履くのか? 僕が? 嫌だ、無理だ、でも――。

「早く履きなさい」

逃げ場なんてない。

ぎこちなくタイツを広げ、足を入れる。冷たくて、柔らかくて、まるで薄い膜に包まれるようだった。ゆっくり引き上げるたび、足が自分のものじゃなくなっていく気がした。

「ウィッグもつけましょうね」

職員が僕の頭にふわりとウィッグを乗せた。鏡を見るのが怖かった。でも、職員の手は容赦なく僕の顔を鏡の前へ向けた。

映ったのは――まるで、知らない“女の子”だった。

喉の奥がカラカラに乾いた。これが……僕?

「メイクもしてあげますね」

頬にチークがのせられ、唇にほんのりとピンクのグロスが塗られる。指で頬を触ると、ほんのりと粉っぽかった。

……僕はもう、僕じゃないのか?

「かわいらしいですね」

その言葉が、ただただ怖かった。

着替えを終えた僕は、震えながら廊下に出た。さっきの先輩たちが、こちらを見ていた。そして、一人がぽつりと言った。

「うふふ、これで、新しい子の完成だねぇ」

それは、歓迎の言葉ではなかった。むしろ、哀れむような、諦めたような――。

その瞬間、僕の心に深い絶望が広がっていった。


おままごとの時間が始まると、職員がにこやかに言った。

「それでは、今日の役割を決めましょうね」

部屋の中央には、小さなキッチンセットやぬいぐるみ、プラスチックのお皿が並んでいた。もう幼児向けのおもちゃなんて触る年齢じゃないのに、それが「当たり前」のように並んでいるのが異様だった。

「じゃあ新しく入ったあなたはママ役ね」

職員が僕の名前を呼ぶ。

「……え?」

耳を疑った。ママ役? 他の子たちを見ると、当然のように「パパ役」「赤ちゃん役」「お姉ちゃん役」と振り分けられている。でも、なぜ僕が……。

「ママは家族をまとめる大事な役割ですからね。優しく、お上品に振る舞いましょうね」

「いや……僕、そんなの……」

「“わたし”って言いましょうね?」

職員がやんわりと訂正する。その瞬間、背筋が凍る。言いたくない。でも、拒否すればもっと厄介なことになるのは、もうわかっていた。

「……わ、わたし……」

小さな声で呟くと、周囲の子たちが「わぁ、ママー!」と笑った。冷や汗がじっとりと滲む。

「さあ、ご飯を作ってね」

職員に促され、僕は渋々おもちゃのフライパンを手に取った。カラフルなプラスチックの野菜をトングでつまむ。……これをやれって? 仕方なく皿に盛ると、隣の先輩が満足そうに笑った。

「ママ、ちゃんと『ご飯ですよ~』って言わなきゃ」

「……え」

「ちゃんと可愛くね?」

逃げ道がない。僕は唇を噛み、消え入りそうな声で言った。

「……ご、ご飯だよ……」

「えぇ~? そんなのママらしくないよぉ」
「もっと優しく言わなきゃ~」

先輩がじっとこちらを見つめる。さっきの朝の会を思い出す。ここでは、「かわいく」やらないと終わらない。

恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じながら、僕は少し声を柔らかくして言った。

「……ご飯、できたわよ~♡」

途端に、周囲が拍手をした。

「わぁ、ママかわいい~」
「これから毎日やってもらおうねぇ」

「そんなの絶対イヤだ……」と言いたかった。でも、もう言えなかった。


―――「トイレに行きたくなったら、どうするか知っていますね?」

午後の個別指導の時間、職員が優しく問いかけた。僕の前には、まるで学校の保健室にあるような模型のトイレが置かれていた。

「……えっと……普通に入る……」

「違いますよ」

職員はふっと微笑む。

「女の子は、スカートを綺麗にたくし上げて座るんです。ほら、やってみましょう」

「えっ……ここで?」

周りに他の子はいないが、それでも人前でそんな仕草をするなんて考えられなかった。

「お行儀よくできないと、お姉さんたちに笑われちゃいますよ?」

言葉が胸に突き刺さる。嫌だ、やりたくない。でも、今朝のことが頭をよぎる。結局、やらなければ終わらないのだ。

震える手でスカートの裾をつまむ。柔らかい布が指にまとわりつく感触が、余計に恥ずかしさを増幅させる。

「そうそう、もっと綺麗に。しわが寄らないようにね?」

ゆっくりとスカートを持ち上げる。足元のタイツが白く伸びて見えた。それを意識すると、さらに居たたまれなくなる。

「じゃあ、腰を下ろしましょう」

模型の便座にそっと腰を下ろす。

「足を閉じて、膝をそろえて。女の子はこうするんですよ?」

職員が優しく促す。

「……はい……」

「よくできました」

頭をぽんぽんと撫でられる。心底いたたまれない気持ちになる。早くこの時間が終わってほしかった。

「終わったら、ちゃんと手を洗いましょうね?」

隣の小さな洗面台に連れて行かれた。石鹸を手に取ると、職員が後ろからそっと手を添えた。

「優しく、くるくると泡立てるんですよ。そう、かわいい手の動きでね」

その言葉のせいで、無意識に手の動きがぎこちなくなる。どうして、手を洗うだけなのに、こんなに恥ずかしいんだろう。

「ふふ、可愛いですね」

囁かれたその言葉が、ただただ怖かった。


下着越しの指、女の子への目覚め

今日も着替えが終わり、鏡に映る、未だに慣れない“女の子”を見てため息をつく。その時、職員の女性が僕に近づいてきた。彼女の笑顔は優しげだったけど、その瞳にはどこか冷たい光が宿っていて、背筋がぞくりとした。

「さあ、今日は姿勢矯正の時間よ。女の子らしく振る舞えるように、少しお手伝いしてあげるね」

「姿勢矯正?」

僕が小さく聞き返すと、彼女はにっこり笑って頷いた。でも、その言葉の裏に何があるのか、僕にはまだ分からなかった。

職員の手が僕の肩に置かれ、軽く押されるようにして部屋の隅にある椅子に座らされた。ラベンダー色のワンピースの裾がふわりと広がり、タイツに包まれた足が妙に無防備に感じられた。彼女は僕の前にしゃがみ込み、じっと顔を見上げてくる。

「まずは背筋を伸ばして。女の子はね、姿勢が大事なのよ」

そう言って、彼女の手が僕の背中に回り、ゆっくりと背骨をなぞるように動いた。指先がワンピースの薄い生地越しに肌に触れるたび、くすぐったさと同時に何か熱いものが体の中を走る。嫌だ、こんなの気持ち悪い……そう思うのに、体が勝手に震えてしまう。

「ほら、もっと胸を張って。女の子らしいラインを見せないと」

彼女の声は優しいけど、命令するような響きがあった。僕がぎこちなく胸を張ると、彼女の手が今度はワンピースの裾に伸びた。

「えっ、ちょっと――」

慌てて声を上げたけど、彼女は「大丈夫よ」と一言で遮り、スカートをそっとたくし上げた。

「何!?」

驚いて足を閉じようとしたけど、彼女の手が素早く太ももに置かれ、動けないように押さえつけられた。タイツ越しに感じるその感触は冷たくて、でもどこか熱くて、頭が混乱する。

「女の子らしい反応を覚えなさい。素直にならないと、ここでは生きていけないわよ」

囁くような声が耳に届き、同時に彼女の指がタイツの上を滑り始めた。薄い生地越しに、敏感な内ももをゆっくりと撫でられると、ゾクゾクする感覚が全身を駆け巡った。

「や、やめてください……」

声が震えて、情けないほど小さくなる。でも、彼女は笑みを崩さない。

「嫌がってる顔も可愛いわね。でもね、あなたは小さな女の子なんだから、大人の言う事には素直に従わないとね」

彼女の指がさらに奥へ進み、下着越しに下腹部を軽く押さえた瞬間、僕の体がビクンと跳ねた。

「うっ……!」

思わず漏れた声に、自分でも驚いた。恥ずかしくて、顔が熱くなる。でも、彼女の手は止まらない。タイツの柔らかな感触と彼女の指の動きが混ざり合って、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。

「ほら、ここが気持ちいいでしょ? 女の子として目覚める第一歩よ」

彼女の指が執拗にショーツの上から敏感な部分をなぞり始めた。円を描くように、時には軽く押すように。薄い生地が肌に張り付いて、その下で熱がどんどん溜まっていく。

「やだ……こんなの、僕じゃない……」心の中で叫んでも、体は裏切るように反応してしまう。息が荒くなり、膝がガクガク震える。

「いい子ね。素直になってきたじゃない」

彼女の手が一瞬離れたかと思うと、今度はタイツの縁に指をかけ、少しだけずらした。冷たい空気が肌に触れた瞬間、羞恥が全身を刺す。でも、その直後に彼女の指が直接触れてきた。

「あっ……!」

声が我慢できずに漏れて、頭が真っ白になった。彼女の指は優しく、でも容赦なく動き続け、の体から力を奪っていく。

「女の子らしい声も出せるようになったわね。これからもっと可愛くしてあげるから、楽しみにしていてね」

彼女の言葉が耳に響くたび、心が締め付けられる。でも、体はもう抵抗する力を失っていた。ワンピースの裾を握り潰し、ショーツとタイツの感触に包まれたまま、僕はただ彼女にされるがままだった。

その日から、僕の「再教育」は新しい段階に進んだ気がした。

そして、鏡に映る“女の子”が、少しずつ自分自身になっていく恐怖が、胸の奥に広がっていった。


オムツとリボンと甘い声

わたしがこの施設に入ってから、もう半年が経った。
かつて「不良」だった自分が、今やこんな格好で鏡の前に立っている。自分でも信じられないけれど、これが現実だった。

つやのあるピンク色の幼児服。そのフリルが肩と裾を囲い、小さな丸襟にはリボンまで縫い付けられている。

わたしの肌は、施設に来た頃と比べてずいぶん白く、滑らかになっていた。毎日決まった時間に塗られる保湿クリーム。時に甘い香りのするローション。これには女性ホルモンがたっぷり入っており、自然と心も体も女の子らしくなっていた。

「今日も、きれいに三つ編みできたわね」

背後から職員がやさしく囁くと、わたしの頭頂部にカチューシャを、そっと触られた。
髪の毛からは、柔らかいピーチの香りがふんわりと立ち昇って、自分の頭なのにくすぐったくて、恥ずかしくなる。

「さぁ登園の時間だよー、出発するよー!」

その声に促され、わたしは施設内にある“幼稚園”へと歩き出す。
服の下で揺れるオムツの感触が、太ももをなぞるたびに羞恥心をかき立てた。わたしはもう、トイレすら一人で使わせてもらえない“園児”にされているのだと、いやでも自覚させられる。

園に着くと、最初は体操の時間だった。すぐに、着替えを命じられる。

「はい、体操服に着替えて。自分でできるよね?」

わたしは黙ってコクリと頷く。みんなが見ている中で、スカートを脱ぎ、オムツも外され、施設指定の白いブルマのような短パンを履く。その布地が、直接肌に吸い付いてくるようで、背筋がぞわりとした。

それだけじゃない。上はタンクトップのような半袖シャツ。ピタリと胸元に張り付き、汗ばむ肌がいやらしいほど透けてしまう。こんな格好で、走ったり、跳ねたりするなんて――。

「わあ、今日もかわいいね」

同じく“お友達”として矯正されている先輩が、笑いながらわたしに言った。彼女――いや、彼も、完璧に女の子として振る舞っていた。

「三つ編み、似合ってる。ほんとに女の子に見えちゃう♡」

「……や、やめて」

思わず口から出てしまったけれど、その声すら甲高く、甘ったるかった。もう“俺”じゃない。完全に、“わたし”になっていた。

そのことが、何よりもぞくっとした。

体操が始まる。屈伸、ジャンプ、腕を大きく回すたびに、短パンの中が擦れる。
ふとももが密着し合い、下着の縁が擦れて、わたしは思わず足を揃え直す。

見られている――誰かに。

周囲の視線が、今の“わたし”の身体を、女の子として見ている気がした。
そのことに、震えるほどの恥ずかしさを感じたのに、どこか、心の奥底が痺れているような感覚もあって……やっぱり、怖かった。

「……ねぇ、今日の午後は“お昼寝ごっこ”だって」

先輩が、小声で囁く。

「おねしょしないように、またおむつ履かされちゃうんだって♡」

わたしは、目を伏せた。きゅっと胸の奥が縮まる。けれど、それはもう抗えないルールだった。

――午後、わたしはどんな風に見られて、どんな風に扱われるのだろう?

その期待と不安が入り混じった感覚を、ゆっくりと舐めるように味わいながら、わたしは体操の号令に合わせて動きを止めた。


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