不良に仕組まれた罠

弱み

あと一回の校則違反で俺は退学になる。

わかってる。もう猶予はない。だからこそ慎重にやってきた。それなのに――。

「どうして、俺のカバンにタバコが入ってるんだよ……」

固まる俺の目の前に、白い指がすっと伸びてきた。生徒会長。表情は相変わらずの無機質。なのに、唇だけが楽しげに持ち上がっていた。

「あらあら、これは…いけませんね」

終わった――そう思った瞬間、彼女はふと首を傾げる。

「……黙っていてあげてもいいですよ。ただし、条件があります」

俺は無言のまま、彼女を睨みつけた。生徒会長は、肩をすくめながら言う。

「明日から、女子の制服を着てください」

「……は?」

「それと、毎朝メイクをしてくること。髪も伸ばしてもらいます。切るのは禁止です。長くなったら、私がヘアアレンジをしてあげますから」

何を言ってるのかわからなかった。冗談だろ?しかし、生徒会長の目は本気だった。

「嫌なら、今すぐ職員室に行きましょうか?」

詰んでいた。

翌朝、俺は指定された女子の制服を着て登校した。スカートの裾を引っ張る指が震える。視線が痛い。噂はすぐに広まり、廊下を歩くだけでくすくすと笑う声が聞こえた。

教室のドアの前に立ち、ひと呼吸置いてドアを開ける。
一瞬の静寂の後に笑いが起こる。

「マジかよw」
「似合ってんじゃん?w」

嘲笑混じりの声が耳に刺さる。

「ふふっ、似合いますよ…」

生徒会長はニヤニヤしながら俺の髪を指で梳いた。

「ほら、動かないでください。口紅、ズレちゃいますよ?」

俺の顔を無理やり持ち上げ、淡い色のリップを唇に滑らせる。その感触が異様に生々しくて、俺は思わず目をぎゅっと閉じた。耳まで熱くなる。

「かわいいですね。これから毎日、ちゃんと仕上げてきてくださいね?」

俺はうつむいたまま、唇を噛む。

一体誰が、俺のカバンにタバコを仕込んだのか――。

これが、終わりの始まりのような気がしてならなかった。


スカートの中

朝、目が覚めると俺はシャワーを浴びるのが日課だ。

昨日受けた羞恥を思い出しながら屈辱に身を震わしていた。なんで俺がこんな目に…。
その時、生徒会長が帰り際に言った言葉を思い出した。

「あなたが望むなら、明日は下着も女子のを穿いてもいいんですよ?」

“まさか!?”

シャワーを止め、脱衣所の引き出しを開けた瞬間、その”まさか”が現実になる。

――ない。

いつもなら無造作に突っ込んであるはずのボクサーパンツが忽然と消えていた。代わりに引き出しに見慣れない袋が入っている。恐る恐る開けると、レースのついた白いショーツが数枚、きれいに畳まれていた。

「……ふざけんなよ……!」

誰がやったのかは、考えるまでもない。生徒会長しかいない。

すぐに電話をかけようとするが、時間はもう登校ギリギリ。もたもたしていたら遅刻でまた減点、退学になる。さっきまで穿いていたパンツは洗濯機の中だ。

「クソ……じゃあ、ノーパンで行くしか……」

想像してゾッとした。俺は今、女子の制服を着せられている。スカートだ。万が一風が吹いたら……? 階段を上るとき、誰かが後ろにいたら……?

「っ……くそ……!」

最悪だ。こんなの、どっちがマシとかない。選択肢が地獄しかない。

だけど、時間は待ってくれない。震える手で、一番シンプルな白いショーツをつまむ。薄い布地。こんなもの、一生縁がないはずだった。

ゆっくりと穿く。脚を通し、腰まで引き上げる。柔らかい感触が肌に吸い付いて、異物感に全身がゾワッとした。

――ぴったりしてる。

締めつけられる感覚が妙に生々しくて、鼓動が早くなる。冷や汗が背中を伝う。

「俺は今……」

吐き気がする。でも、鏡を見ると、そこには……女子の制服を着て、スカートの下にレースのショーツを穿いた”俺”がいた。

ガクガクする足を必死で動かし、家を飛び出した。

――学校に着くと、いつも以上にスカートの裾を気にしてしまう。昨日と同じ制服なのに、今日だけ異常に短く感じた。

(誰にも……バレてないよな……?)

気のせいか、すれ違う女子がじっとこっちを見ている気がする。クスクスと笑う声が自分に向けられたような錯覚を覚える。

(まさか……いや、気のせいだ。知られるわけが――)

「おはよう。準備はバッチリみたいね?」

生徒会長の声が耳元で囁く。振り向くと、ニヤニヤと悪魔のような笑みを浮かべた彼女が立っていた。

「ど、どういう意味だよ……」

「そんなにスカートの裾を押さえながら歩いてたら、何か隠してるってバレバレだよ?」

心臓が跳ねる。生徒会長は俺の耳元に顔を近づけ、小声で囁いた。

「ねえ、穿いてるんでしょう? 女の子のパ・ン・ツ」

「……っ!」

全身が燃えるように熱くなった。冷や汗が噴き出し、喉がカラカラになる。

「自分で女の子のパンツを選んで穿いてくるなんて…。大丈夫、誰にも言わないよ…。だからね…」

生徒会長は俺の顎を指で持ち上げ、笑った。

「今日一日、しっかり”女の子らしく”振る舞いなさい?」

地獄は、まだまだ続きそうだった。


戯れ

1限目は気が気じゃなかった。ただでさえ慣れない女子の制服を着ているのに、更に女子のパンツを穿いているなんて…。これだけは周りに絶対にバレる訳にはいかない。

休み時間。自分の席を立った瞬間に、生徒会長が近寄ってきた。

「今はどんな感じになってるのかな?」

彼女の白い指が俺のスカートの裾に触れる。

「や、やめろっ!」

慌てて後ずさるけど、彼女は楽しそうに笑いながらまた手を伸ばす。教室にいる周りの数人が何事だとこっちを見ている。

「何!? やめてくれって!」

スカートの裾が少し持ち上がる。白いレースが一瞬だけ見えた気がして、全身が震えた。

「恥ずかしいからやめろよ!」

叫ぶ声が裏返る。顔が熱くて、涙さえ滲みそうになる。生徒会長は手を止めて、ニヤニヤしたまま俺を見下ろす。

「ふふっ、焦ってる顔がかわいいわね。でも、そんな大声出したら余計目立っちゃうわよ?」

周りの視線が刺さる。誰かが

「何?下着見えちゃったの?」

と囁くのが聞こえて、頭が真っ白になる。

「やめてくれ……頼むから……」

スカートの裾が再び持ち上げられそうになる。慌てて両手で押さえるけど、彼女の指が意地悪く動いて、布が擦れる音がする。

(バレる……こんなとこで、みんなの前で……!)

羞恥に全身が震える。顔が熱くて、耳まで真っ赤だ。なのに――なぜか、下着が食い込む感覚が強くなって、変な疼きが止まらない。

(何だよこれ……恥ずかしいのに、この感情は…)

「ふふっ、いい反応ね。恥ずかしがってるのに、どこか嬉しそうじゃない?」

生徒会長の言葉が頭に突き刺さる。否定したいのに、身体が勝手に反応してる。

「さあ、次の授業が始まるから席に着こうか?」

彼女はそう言って、俺の耳元に口を近づける。

「昼休み、第二化学室の隣の女子トイレに来なさい。私がメイク直ししてあげる。そのついでに……下着もちゃんとチェックしてあげる」

心臓が止まりそうになる。女子トイレ?下着のチェック?

「嫌なら職員室行きでもいいけど?タバコの件、忘れてないわよね?」

「………」

逃げ道がない。

「いい子にしてたら、ご褒美あげるかもね?」

ご褒美って何だよ。頭が混乱する。でも、スカートの下で白いレースがさらに食い込む感覚が強くなっている。俺は、ほんの少し、期待してる自分に気付いてしまった。

(俺はどうなってしまうんだ……?)

地獄はまだ続く。でもその先に、何か甘いものが待ってるような、そんな予感がしてならなかった。

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