彼女に見つかった日
付き合い始めて、ちょうど2ヶ月。
僕にとっては、人生初の彼女。笑った顔も、怒った顔も、すべてが新鮮で愛おしい。
そんな彼女が、ある日ランニングを始めた。
「最近、運動不足だしね」と、軽いノリで言う彼女が、僕の部屋でスポーツウェアに着替える。薄手のピンクのランニングシャツに、黒いショートパンツ。シャツは汗を吸いやすいメッシュ素材で、微かに肌が透ける。いつも軽く微笑む彼女が、スポーティーな姿を鏡に映しているその横顔に、僕は目を奪われていた。
その日、彼女はふんわりとしたフリルの付いたブラウスを脱ぎ、ベッドの上に無造作に置いていった。薄いシフォン素材が窓からの光を受けて、柔らかく輝いている。隣には、落ち着いたグレーのミニスカート。ウール生地で上品な印象だ。
僕は気付いたら、そのブラウスを手に取っていた。肌に乗せたときの軽さ、指先を通して感じる微かな冷たさ。それが自分の体を包む瞬間、思わず目を閉じた。
スカートもそっと履いてみる。腰に生地がまとわりつく感触は、想像以上に心地よく、そして自分ではない誰かに生まれ変わったような不思議な感覚をもたらした。鏡に映る姿は、思い描いていたものとは違う。でも、その違和感すら妙に魅力的だった。
そのとき、玄関のドアが開く音がした。
「ただいま、今日は少し早く帰ってきたよ」
彼女の声が耳に届く。僕は反射的に鏡の前から離れようとしたが、逃げる間もなく、リビングドアが開いた。
「っ!?……」
彼女は一瞬、驚いた表情を浮かべた後、すぐに笑みを浮かべた。
「へぇ、そういう趣味だったんだ?」
恥ずかしさに顔が赤くなる。言い訳もできない僕を前に、彼女は軽く首を傾げた。そして、柔らかな声で言った。
「似合ってるよ。もっと可愛くしてあげる」

それからの日々、僕は彼女に導かれるように、新しい世界を知ることになる。シフォンのブラウス、レースのキャミソール、柔らかく伸びるニットのワンピース。服が肌を包むたびに、羞恥と快感が交錯する。
そして、僕は少しずつ、その新しい自分に向き合い始めていた。
双子コーデのはじまり
「次は何を着せようかなぁ」と呟きながら、僕を試すような微笑みを浮かべる。
あの日から僕は彼女の着せ替え人形の様に、色んな服を着させられている。心の中ではそれを期待しつつ、戸惑いを装う僕を、彼女の目は確実に見抜いていた。
「今日は一緒に双子コーデをしてみようよ!」
渡された紙袋の中には、フリルがふんだんにあしらわれたピンクのブラウスと、丈の短い黒のプリーツスカートが入っていた。
「ほら、早く着てみて!あっ、その前に…今日からは、ちゃんと胸も作ろうね!」
すると彼女はシリコン製のパッドとブラジャーも手渡してきた。
「いや、ここまではしなくても…」
「服を綺麗に着てあげる為だから心配しないで」
今さら彼女に抗えるはずもなく、数分後、僕の胸には大きく膨らんだ偽乳があった。
彼女に急かされるまま、そのまま僕は鏡の前で服に袖を通した。レディース特有の柔らかな服の生地が僕の肌を包む。心もとない丈のスカートがふわりと太もものまわりを舞った。胸の奥に小さな高揚感を生み出す。
「よし、次はメイクね」
彼女は椅子を用意して、僕を座らせる。
アイシャドウのブラシが肌に触れると、ほんのり冷たい感触がした。彼女は手際よく色を重ね、リップを塗り、僕の顔を仕上げていく。
そして手渡されたのは彼女と同じぐらいの長さの綺麗な黒髪ロングのウィッグだ。
「私と同じ髪型にしようね」
手際よくツインテールに結ばれ、仕上げにリボンで飾り付けをする。
「すっごい似合う!」
彼女が手を叩いて笑う。僕は気恥ずかしさを隠すように鏡を覗いたが、そこに映る自分の姿に、思わず口元が緩んでしまった。
「本当に、これ……僕なの?」
女の嬉しそうな声に、自然と笑みが浮かんだ。
外に出ると、いつもの景色が違って見えた。僕たちが揃いの服を着て歩くたびに、風がスカートを揺らし、二人の影がぴったりと重なる。カフェで並んで座ると、彼女がそっとスマホを取り出し、二人の写真を撮る。
「ほら、笑って」
カメラのレンズに向けて笑顔を作ると、胸が少しだけきゅっと締め付けられるような感覚がした。それが何なのか、言葉にはできなかったけれど、嫌ではなかった。
ショッピングモールを歩くとき、ふとガラスに映った二人の姿が目に入った。ブラウスとスカートがそっくりな二人――まるで姉妹のように見える僕たちに、胸の奥が妙にわくわくしてくる。

「次はどんなコーデにしようか?」
彼女が言うと、僕は思わず答えてしまった。
「もっともっとフリフリのやつがいいな……」
自分の口から出た言葉に驚く間もなく、彼女が笑いながら頷いた。僕はその笑顔を見ていると、なんだか胸が熱くなるのを感じた。
その日は、帰り道でもスカートの裾を揺らす感覚が楽しくて、何度も歩き方を変えてみた。軽くステップを踏むたび、彼女が笑いながら「女の子みたいだね」とからかう。そのたびに、僕はなんとも言えない喜びを感じていた。
気がつけば、双子コーデをする日は、彼女と同じくらい楽しみにしている自分がいた。
ロリィタに包まれて
次の日曜日、彼女がいつもより少しだけ早く僕を呼び出した。
「今日はね、特別な服を用意したの」
その言葉に、僕はまた少しだけ胸が高鳴るのを感じた。いつもの双子コーデの延長だろうか?どんな服だろう?そんな期待と少しの不安を抱きながら、彼女が差し出した袋を受け取った。
中から現れたのは、僕が今まで見たこともないような、華やかで繊細な服だった。
「これ、ロリィタファッションって言うんだよ。着てみようよ!」
彼女の目はキラキラと輝いている。僕は思わず息を呑んだ。
フリルのリボン、そしてレースががふんだんにあしらわれたまるで絵本の中から飛び出してきたような紺と水色のワンピース。それに合わせた頭物のリボン。そして綺麗なAラインを作る為のパニエ。
「これを僕が……?」
思わず問い返すと、彼女は笑いながら頷いた。
「絶対似合うって思って選んだんだよ。ほら、早く着てみて!」
言われるがまま、下着として着用するドロワーズを穿き、ワンピースを身に纏う。仕上げにパニエで裾を綺麗に膨らます。まるで人形のような姿になった僕が、鏡に映っている。
「ほら、完璧!」
彼女は満足そうに僕を見て、手を叩いた。
「どう?」
彼女に聞かれて、僕は鏡越しに自分の姿を見た。見知らぬ誰かのようでありながら、その誰かは確かに僕自身だった。胸の奥に、小さな達成感と高揚感が生まれる。
「……悪くないかも」
つい口をついて出た言葉に、彼女が嬉しそうに笑う。
「それじゃあ、この服でお出かけしよっか!」
軽い調子で言う彼女に、僕は驚いた。
「えっ、これで外に?」
思わず聞き返すと、彼女はニヤリと笑った。
「もちろん。せっかく可愛くなったんだから、みんなに見せなきゃ!」
彼女に手を引かれ、僕はふらふらと玄関に向かった。外に出ると、パニエで膨らんだワンピースの裾が風で揺れ、ヒールのある靴が舗道を小気味よく鳴らした。街の中で振り返る人々の視線を感じながら、僕は彼女と手を繋ぎ、歩き続けた。
ふと、ショーウィンドウに映る自分たちの姿が目に入る。揃いのロリィタファッションに身を包んだ二人――まるで仲の良い姉妹のようだ。その光景に、僕の中で小さな喜びが弾けた。

「ロリィタデート楽しいよね!2人のお姫様って感じで!」
彼女が呟く声が耳に届く。その言葉に、僕は自然と頷いていた。
僕はもう、この世界から抜け出せないかもしれない。
甘い罠のランニング
「今日はね、ランニングに付き合って欲しいんだ!」
朝食を食べ終えた頃、彼女が楽しそうに言った。
ランニングなんてほとんどしたことがないし、体力に自信もない。でも、彼女に付き合うぐらいならと、軽く頷いた。
「いいよ、じゃあ着替えてくるね」
クローゼットを開け、自前のジャージとTシャツを取り出そうとした瞬間、彼女の手がそれを制した。
「待った!」
振り返ると、彼女は小さな紙袋を手にしていた。
「こっちを着てね」
紙袋を手渡され、中を覗いた瞬間、僕は息をのんだ。
——スポーツブラと、ブルマー。
「え、ちょっと待って。これは……」
「ランニングするなら、ちゃんとしたスポーツウェアを着ないと!」
彼女はにこにこと笑いながら言う。
「でも、これって……」
「大丈夫、大丈夫!ブルマーの方が走りよ!それに、スポブラのほうが動きやすいし!」
いや、そういう問題じゃなくて。
言葉を濁す僕の腕を、彼女がぐっと掴んだ。
「ほら、早く着替えて!走る時間、どんどん遅くなっちゃうよ?」
彼女の笑顔に押されるように、僕はしぶしぶ紙袋を抱えて洗面所へ向かった。
———
鏡に映る自分を見て、愕然とする。
ぴったりと体に密着するスポブラ。胸の膨らみがないせいか、布が余るように見えるが、それでも背中や肩に沿う感触が妙に生々しい。
そしてブルマー。
こんなに短いとは思わなかった。ももにぴったりとフィットし、下着のラインまで浮かび上がりそうなほどだ。これで外に出るなんて、正気の沙汰じゃない。
「わぁ……」
思わず呟いた僕の背後から、彼女の声がした。
「うん、すっごく似合う!」
「!? ちょっ、勝手に入ってこないで!」
「だって、遅いんだもん!さ、行こっか!」
———
外に出ると、朝の空気がひんやりと肌に触れた。
「じゃあ、行こっか!」
彼女は軽快に走り出す。僕も後を追おうとするが、足を動かすたびに恥ずかしさがこみ上げてくる。
公園を走りながら、ちらちらと視線を感じる。
「はぁ……はぁ……やっぱり、恥ずかしい……」
「えー?そんなことないよ?めっちゃ可愛いのに!」
彼女は悪びれることなく笑っている。

ランニング中、彼女は楽しそうに話しかけてくるけれど、僕は自分の格好が気になって、それどころではない。汗をかくとブルマーがぴたりと肌に張り付き、スポブラの締め付けが妙に意識される。
なのに、ふとした瞬間、心のどこかでこの感覚を楽しんでいる自分がいることに気づいた。
「ねぇ、次は何着たい?」
彼女の悪戯っぽい囁きに、僕は言葉を失った——。
純白の誓い
あれから、ちょうど一年が経った。
彼女の服を着ているところを見つかった、あの日。あの恥ずかしさと安堵と、どうしようもない高揚感は、今も胸の奥に焼き付いている。
そして今、僕はウェディングドレスを着ている。しかも、彼女とお揃いの――まるで双子みたいに、純白のドレスに身を包んで。
柔らかなシルクオーガンジーが、腕をすべるたびにひやりとした感触を残していく。ドレスの胸元にはレースが丁寧にあしらわれていて、少しでも肩を動かせばふわりと揺れた。コルセットで引き締められたウエストから、花びらのように広がるスカート。その重みが、今の僕の「かたち」を受け止めている気がして、なんだか誇らしくなる。
鏡に映る僕は、もう「男の子」ではなかった。うっすらと血色ののった頬、パウダリーな肌、カールさせた前髪が額にかかると、自然と指先で整えてしまう自分がいた。
胸に軽く触れると、レースの中のパッド越しに、下着の締め付けと温もりが混じって、かすかに鼓動が跳ねる。ふと横を見ると、彼女も僕とまったく同じドレスで、微笑んでいた。
「緊張してる?」
彼女がそっと僕の手を握った。指先が触れた瞬間、フローラルの甘い香りが鼻をくすぐる。普段より濃い目に引いたアイラインが、今日の彼女を少しだけ大人びて見せていた。
「うん……でも、なんか変な感じ。僕がこんな格好して、バージンロードを歩くなんて」
言いながらも、自分の声が微かに震えているのを感じた。これは羞恥じゃない。戸惑いでもない。ただ――
「嬉しいよ。一緒に、こうして並べるのが」

あの日、ふわりと彼女の洋服に包まれたときの、自分じゃない何かになった感覚。双子コーデでデートを繰り替えした日々……。あれは恐れじゃなかった。解放だったんだと、今なら分かる。
チャペルの扉が開く。白い光が差し込み、無数の視線が僕たちを包み込んだ。友人たちの中には驚いた顔をする人もいるけれど、誰も否定しない。それが、今の僕たちの答えだった。
ドレスの裾が静かに床を滑る音と、僕のヒールのかすかな音。隣では彼女も、同じ歩幅で歩いている。ふたり、まったく同じ形で、まったく違う存在として。
「ねえ、これからもずっと、双子コーデでいようね」
彼女の言葉に、僕は小さく頷いた。
いつかこのドレスが、クローゼットの奥にしまわれる日がきても――きっと、僕たちは並んでいる。今日のこの白い記憶を、互いの肌に、心に、そっとまといながら。
誰かになるんじゃない。誰でもない自分を、ちゃんと愛せるようになっただけ。
そして今、僕はその証として、白いベールをかぶる。
――これが、僕の新しい人生のはじまり。
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