矯正下着でつくる“私”──底辺営業マン、女体化の出社日

営業成績ゼロ──追い詰められる僕

矯正下着の営業を始めて半年、僕の成績は毎月ワースト。

矯正下着とは、伸縮性と補整力に優れたパワーネットやスパンデックスで胸・ウエスト・ヒップを理想的な位置に固定し、姿勢も整えるボディメイクウェアの事で、安くても数万円、高い物で数十万円する代物だ。

僕自身、カタログ丸暗記の説明しか行う事が出来ず、数字だけが虚しく弾かれていく。
今日も会議室で上司に詰められた。

「あなたには商品の良さがまるで響いていないわ」

「す、すみません……」

鋭いヒールが床を叩く。上司は一拍置き、ゆっくり笑った。

「じゃあ質問。どうすれば本当に良さがわかると、あなたは思う?」

言葉に詰まる僕。重い沈黙。

「……じ、自分で着用してみること、です」

半ば誘導されるように、そう答えていた。

――翌朝。
自宅の洗面所でパッケージを開くと、サテンの深い艶が夜明けの蛍光灯に揺れた。指先が吸い付くような滑らかさ。
まずフルカップブラ。背面ホックを締めると、胸筋が寄せ上げられ柔らかな丸みを帯びる。
次にウエストニッパー。強弾性ボーンが肋骨を撫で、余った肉をくびれへと導く。
最後にヒップリフトショーツ。高密度ネットが臀部を下から押し上げ、丸く艶やかなカーブを描いた。

鏡の中でシャツを閉じると、谷間が影を落とし、ウエストは女性モデルのように絞られ、ヒップラインがスラックスを満たす。

「……すごい、けど……これで会社に?」



胸が脈打つたびブラのワイヤーが微振動を返し、下腹部がじわりと熱くなる。肌を撫でる生地の圧迫感が、羞恥と甘い疼きを同時に煽った。

(誰にも見られちゃいけない。なのに……こんなに感じてるなんて)

頭では拒絶しているのに、身体は女らしく形作られる悦びを蜜のように滲ませる。

髪を整えると、ほのかなシャンプーの花香がふわり。いつもと同じ香りなのに、艶やかな胸元と重なると、まるで別人の匂いのようだ。

バッグにカタログを詰めながら、スマホが震えた。

『今日は社員みんなの前であなたの“実体験”を語ってもらうわ』――上司からのメッセージ。


背筋を補正ベルトが真っ直ぐに貫く。高鳴る鼓動と喉奥の甘い溜息。

僕は深く息を吸い込み、シューズの踵を鳴らして玄関を開けた。

――会社へ向かう足取りの先に、どんな現実が待っているのだろうか…。


社内プレゼンと女子トイレ

会議室のドアを開けた瞬間、視線が刺さった。

「……では本人から、“実体験”を語ってもらいましょうか」

上司の声が、静まり返った空気に落ちる。僕は前に出るよう促され、ネームプレートを胸元に揺らしながら歩いた。足元がふらつく。背中を矯正ベルトが支えてくれるけれど、胸のブラが衣擦れで「すっ」と熱を走らせるたびに、体の芯がくすぐったくなって──

「ちょっと待って。そのスーツの下、着てるわよね?矯正下着」

上司が、わざとらしく笑った。

「脱いで、見せてくれる?皆にも“効果”を見せないとね」

「えっ……」

失笑が広がる。男性社員の目が、僕の胸元とウエストを往復している。女子社員たちはささやき合いながらも、興味津々でこちらを見ていた。

(まさか本当に、脱ぐのか……?)

けれど、逃げ道はなかった。上司が差し出したのはプレゼン用のパーテーションボード。その裏に入るよう促され、僕は震える指でスーツのボタンに手をかけた。

カチャ……カチャ……

ボタンを外していくたび、空気が肌に触れた。光沢のあるベージュのブラがシャツの内側からうっすら透けて見える。前に鏡で見たときよりも、谷間がくっきりと深く、ブラの縁から盛り上がったふくらみが揺れているのがわかる。

ウエストを締めたラインが、骨盤にかけてすらりと滑らかに繋がり、脚の付け根でヒップをふっくらと持ち上げている。

「……すご……」

誰かが呟いた。こっそり聞こえたその一言に、胸がビクッと跳ねた。恥ずかしい。見られてる。なのに、逃げられない。

(お願い、これ以上……見つめないで……)

そんな想いとは裏腹に、身体の奥が熱を帯びて、下腹部にツンとした疼きが走った。
谷間に汗が滲む。肌着の中がしっとりしてくるのがわかる。

「……それでは、体験を語って貰おうかな……どうぞ」

上司の手が、僕の背中を押した。

「……え、えっと……」

唇を湿らせて、震える声を絞り出す。

「ぼ、僕が着用したのは……弊社の“プレミアムライン”の矯正下着です……」

空気が少し動いたのがわかる。数人が身を乗り出した。

「まず、胸部分……は、えっと、胸筋を中心に寄せて、丸みを出すように設計されていて……」

(どうしてこんな話を、男の僕が……)

「フルカップで…装着すると……自然に谷間ができて。軽く押さえると、ちゃんと……柔らかく弾むというか、形がキープされるんです……っ」

「次に、ウエスト部分……強弾性のボーンが入ってて、肋骨下からお腹周りまでを締めて……その、余った肉を下から上に押し流す構造になってて……」

「ウエストラインが絞られて……あの、僕でも……見た目、すごく女性らしい曲線ができました……。くびれって、本当に作れるんだなって……」

クスクスと笑いが漏れる。でも誰もバカにしているわけじゃない。その視線は、興味と、どこか……欲望に似た熱を含んでいた。

「そして……ヒップアップショーツ部分です。えっと……高密度の補整ネットが、お尻を下から持ち上げて……脚の付け根の角度まで変えてしまう感じで……」

「……歩いてると、生地が太ももに擦れて……それが……なんというか……」

言葉に詰まった。言えない。けど──言いたい。

(気持ちよくて、怖くなる……)

「──すごく、効きます……っ。身体のラインだけじゃなくて、意識まで、変えられる感じです」

「……へぇ」

誰かが漏らしたその一言が、まるで胸の奥を撫でるように響いた。


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