「男子校」の制服がスカートだった日
スカートの裾が、太ももにふれては離れて、またふれて。
朝の光がカーテン越しに白く差し込む六畳の寮の部屋。
鏡の前で、僕はリボンの結び目を整える。きれいな三角ができない。焦る。そろそろ寮をでないと遅刻してしまう…。
――合格通知が届いたとき、両親はやけににこにこしてた。
「合格おめでとう!全寮制だから寂しくなるけど、あなたの将来には絶対にプラスになるわ」
母親に進められた学校への進学。自分では特に調べもせず、何も考えず都内の試験会場で受験をした。
制服採寸に連れて行かれたあの日。
「身体にフィットするラインが大事だから」
なんて、学校職員が言った。……今ならわかる。あれが、最初の違和感だった。
この学校には、奇妙な仕組みがある。
女子大の附属高校で、男子校と女子校がある。
姉妹校である女子校の生徒は普通だ。進学も自由、服装もオーソドックスなセーラー服で、どこにでもある女子高生たち。
だけど、男子校は違う。
全寮制。校則は絶対。制服はスカート。
授業のカリキュラムには『女性的表現法Ⅰ』『社会における女性の役割と適応』『美容演習』なんて科目が並ぶ。
朝の点呼のあと、全員で一列に並び、チェックされるのは髪型、スカート丈、リップの色合い。
寮での規則はもっと細かい。
・毎朝のメイクは必須
・スマホ・外部連絡は月1回の保護者通話のみ。SNS使用禁止
・食事は全て管理され、配膳の際に『女性ホルモンカプセル』が添えられる
・風呂は時間制で、スキンケアまで指導員が見回り。お風呂上りは塗り薬タイプの女性ホルモンを生徒同士で塗り合う
・“旧名”(本来の名前)での呼び合い禁止。互いに“女子名”で呼び合うこと
名前まで、書き換えられるんだ。
最初は僕も抵抗してた。“僕”って呼んで、“女の子らしく振る舞え”っていう指導を無視していた。
だけど、一週間も経てば自分がこの学校で異端なんだと思ってくる。世間ではこの学校自体が異端なはずなのに…。
見た目が女子の格好をしているからか、“私”として扱われることが、もう当然なんだと、誰もが思っている。今は自分自身も…。
スカートのプリーツを、指先でそっとなぞる。
ポリエステルとコットンの混紡。意外としっかりしてて、ひらひらしすぎない。
けれど、それが余計にリアルだ。――まるで、本物の“女子高生”になったような。
そして、噂を聞いた。
「2年生からは“実習”があるらしいよ」
「外部の企業や店舗と連携して、“社会で通用する女の子”になるためのね」
「逃げようとした子、いたらしいけど、性転換手術をさせられて風俗に売られるんだって」
息が詰まりそうだった。
だけど、制服に袖を通さないといけない。
このスカートを履いて、笑顔を作って、教室に行かなきゃいけない。
そうしないと……。
ある日、学校の掲示板に、新しいお知らせが貼られていた。
来週より、夜間の“順化指導”が開始されます。対象者には個別に案内します。
拒否はできません。心身の安定のために必要なステップです。
順化……?
なんだそれ……?
僕は、どこまで“僕”を失っていくんだろう。

順化指導──“可愛い”を認めさせられていく日々
順化指導の初日。
白い個室。香りはお菓子のような匂い。マカロンと、リボンと、柔らかな布の感触――全部、何かの記憶を刺激する。
指導員は、今日も僕の正面に座って言った。
「ねえ、あなた、“可愛い”って、どう思う?」
可愛い。
それは、僕が“関わっちゃいけないもの”だったはずの言葉。
でも、制服のレースやリボン、香水やパウダー、女子寮で見たふわふわのぬいぐるみ――そのどれもに、最近、心が動くようになっていた。
「……悪くない、かも……」
「“悪くない”じゃなくて、“素敵”って思ったでしょ?」
反射的に否定しようとしたけど、指導員はすぐに言葉を重ねる。
「ねえ、女の子って、いつも可愛いものが身近にあって当たり前よ。逆に、可愛いものを好きって思えない方が不自然なの。あなた、ずっと違和感あったでしょう?」
違和感。
……あった気がした。
男の子として扱われた頃、ランドセルの色、制服の色、髪型。
本当は、もっと柔らかいものに触れていたかった。
でも、それを“ダメだ”って教えられた。
「その違和感はね、あなただけじゃない。“ちゃんとした女の子”の感性を持ってる子は、みんなそうだったの。だから、ここに来た」
僕の心に、小さなひびが入ったような気がした。
彼女は続ける。
「女の子ってね、“可愛い”って感じた瞬間、世界がきらめくの。苦しいときでも、リボンひとつで立ち直れる。だからあなたも、その感性を育てなきゃいけないのよ」
手渡されたのは、ふわふわのポーチだった。
中には、パステルカラーのペンや、ピンクのメモ帳、香り付きのリップクリーム。
「これ、全部あなた専用。今週はこれをいつもポケットに入れて、日記を書いてね。“今日感じた可愛いこと”を一日ひとつ、言葉にしていくの」
「……な、なんで……」
「可愛いものを好きだと思える感性こそ、女の子の心の土台なの。“男の子の仮面”を外して、本来のあなたに戻るために必要なの」
仮面――。
その言葉に、胸が痛んだ。
もしかしたら、僕がずっと無理して“男の子”を演じてきただけなら……。
それが崩れるのは、怖いようで、どこかでホッとする気持ちもあった。
「あなたが本当は、女の子の心を持ってること。もう、周囲はみんな気づいてるのよ」
そう言って微笑む彼女の目は、嘘を見逃さない大人のまなざしだった。

その夜、寮に戻って――
リップクリームをひと塗りしてみた。
鏡の中で、僕は少し顔をしかめながら、それでも、ほんの少し笑った。
「……なんだよ、これ……でも……」
頬に触れる指先が、いつもよりずっと細く感じた。
“可愛い”は、僕の中にずっとあった。
ただ、隠していただけ。忘れたふりをしていた。
――順化指導は、まだ始まったばかり。
次は「女の子として感情を言語化する訓練」が始まるという。
女の子でいることが当たり前になるまで、自分の“違和感”は矯正され続ける。
それが、指導員によって無理やり作られた、偽りの“違和感”であっても…。
羞恥と快感の境界線──ホルモンと女の子の下着
この学校に入学して半年が経過した。
どうやら私の今までの人生は間違えて“男”として過ごしてしまっていたようだ。
今の“女の子の自分”が、本当の自分なんだ。
今日も一日の学校生活が終わり、寮の大浴場で汗と疲労と洗い流した。
湯気がまだほんのり残る浴室前の指導室。
薄桃色の照明が、女の子だけの空間に見えた。
「うなじ、出して」
そう言われて、髪をふわりと掻き上げる。
バスローブの襟元がずれて、肩がすべすべとあらわになる。ぬるん……と、クリームが塗り込まれた。
「冷たっ……」
でも、それも一瞬。
そのあとは、じんわり。
背中のラインを、誰かの指が沿っていく感覚が、ぞくぞくと這い上がってくる。
「胸元も、ちょっと開けて。ちゃんと浸透させないと」
バスローブの前を、自分の手で少しだけずらす。
こく、っと喉が鳴ったのを、自分でも聞こえてしまった。
くちゅ、くちゅ……ぬる、ぬる……
ホルモンクリームはほんのり甘い匂いがした。
ピーチミルクみたいな香り。
その匂いが、肌にすり込まれていく。
「ふふ、やわらかくなってきたね」
その言葉にハッと気づく。
確かに、胸のふくらみが、わずかに主張してきている気がする。
鏡の中でそれを確認するたびに――もちろん嫌悪感じゃなくて、どこか「うれしい」気持ちが湧いてくる。
――私…身体も女の子になってきて……嬉しいな。

バスローブの裾から、太ももがちらちらと覗く。
そこに塗られるホルモンの冷たさと、他人の指が触れてくる感触。
なんだか、それだけで……ふぅ、って息が漏れてしまいそうだった。
「ねえ……女の子の身体って、こんなに敏感なの?」
誰かの声が聞こえる。
けど、誰も笑ってなんかいない。
この“儀式”は、全員にとって“真剣”なんだ。
“女としての自分”を育てていく大切な時間。
自分の身体が、日ごとに女の子になっていく。
胸のふくらみ、腰のライン、肌のすべすべ感。
どれも、もう“男だった頃”の自分から遠く離れてしまった。
――翌朝。
下着棚から取り出したレースのショーツは、
昨日よりも、肌に吸い付くようにしっくりと馴染んだ。
くしゅっ、と柔らかい音を立てながら足を通す。
レースが太ももに沿って、ふわ……っと包み込む。
「……落ち着く……」
はずなのに、どこかぞわぞわして、
スカートを履く前に、鏡の前で指をそっとショーツの上から這わせてみた。
この“女の子の快感”が、今の自分には必要なものだと思えた。
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