文化祭で決まった強制女装
昼下がりの教室は、ざわざわと波打つ音に包まれていた。
文化祭で「女装・男装コンテスト」をやる──そんな話が、黒板の前で盛り上がっている。
僕は窓際の席から、ただ外の空をぼんやり見ていた。
校庭の木々が、ゆるやかに風に揺れている。そんな景色が、今はやけに遠く感じた。
「男装は心奈しかいないでしょ! 絶対似合うって!」
誰かが言うと、教室が一段とざわめいた。
❝立花 心奈(ここな)❞──クラスの中心で、いつも笑顔を絶やさない、僕の憧れの人。
整った顔立ちに、さらりとした黒髪。制服の襟元から覗く首筋は白く、どこか儚げで、僕は時々息が詰まるほど見惚れてしまう。
「いいよ、やるよ」
軽やかに言い放つ彼女の横顔が、ほんの少し大人びて見えた。
僕はそんな世界から一歩引いた場所にいる。
声を出すのも得意じゃないし、目立ちたくない。
だから今回のイベントも、自分には関係のないものだと思っていた。
──はずだった。
「葵ってさ、女装似合うんじゃね?」
唐突に自分の名前を呼ばれ、体がビクリと震えた。
「えっ……?」
視線が一斉に僕に注がれる。
逃げ場をなくした小動物みたいに、ただ俯くことしかできなかった。
「色白いし、細いし、女の子にしたら意外に似合うんじゃね?」
無邪気な笑い声に、心臓がドクンドクンと音を立てる。
「待ってよ、僕は……」
言いかけた声は、誰かの「じゃあ決定!」という明るい声にかき消された。
空気はすでに僕を“参加者”として扱っている。
頭が真っ白になったまま、背中を押されるように演劇部の部室に連れて行かれた。
狭い部屋の中、ラックには文化祭用の衣装が無造作に並べられている。
「これ、着てみなよ」
差し出されたのは、クリーム色のドレスだった。
手に取ると、サテンの布がするりと指を滑り、冷たさと同時に、どこか背徳的なざわめきを胸に残した。
制服を脱ぐ時、シャツが肌から離れる「サッ」という音が耳に刺さる。
誰かの視線を感じるたび、肌がじんわり熱を持つ。
ドレスを頭からかぶると、薄い生地が背中をなぞり、ヒヤリとした感触が背骨を走った。
腰回りでチュールのスカートがふわりと広がる。
指で裾をそっとつまむと、しゃりっとした糸の感触が残り、無性に恥ずかしい。
「動くないで。ファスナー上げるから」
背中を撫でるように、冷たい金属の音が「ジィ……」と上がる。
締め上げられるたびに、肺が押しつぶされるようで、呼吸が浅くなる。
「やっぱり、似合うね……葵くんって女の子みたいだ」
「やばっ…私よりも可愛いじゃん」

誰かの言葉が耳をくすぐり、鼓動がさらに速まった。
──その時、ふわりと甘い香りがした。
顔を上げると、立花さんが立っていた。
彼女の黒髪から漂うシャンプーの香りが、距離を一気にゼロにする。
「本当に似合う。思った通りだよ」
その声は、からかいじゃなく、優しい色をしていた。
「少し髪、整えてもいい?」
差し出された手が、僕の前髪にそっと触れた。
指先が髪を梳くたび、胸の奥がじんわりと熱くなり、呼吸が詰まる。
「文化祭までに、もっと女の子に見えるように練習しようね」
立花さんの微笑みは、どこか挑むようで、優しくて、僕は頷くことしかできなかった。
胸が高鳴る音だけが、やけに鮮明に響いていた。
二人だけの告白
「心菜、私たちは一回、教室に戻ってるから、葵にメイクしてやってよ!」
そう言うと、他のクラスメイトは部室を後にした。憧れの立花さんと2人きり。僕が女装をしなれば、こんな事は絶対になかったのだろう。
「葵くん、こっち向いて」
立花さんの声が、耳の奥で柔らかく響く。
僕は反射的に首を横に振ったけど、次の瞬間、顎にそっと添えられた指が僕の顔を上向かせた。
指先は思ったよりも冷たくて、そこから背筋までゾクッとした感覚が走る。
「そんな顔しないで。ちょっとだけ、ね?」
彼女がパフを手に取り、僕の頬を軽く叩くように動かした。
「サラッ、サラッ」と、粉が舞う音が微かに聞こえる気がする。
薄い肌色のパウダーが、僕の顔をなぞり、くすぐったいような感触を残していく。
「……肌、綺麗だね。男子なのに」
立花さんが小さく笑う。その一言で、鼓動がドクンと跳ねた。
僕は思わず視線を落とし、スカートの裾をぎゅっと握った。

心奈──いや、立花さんにそう言われるのは、なぜこんなに恥ずかしいんだろう。
鏡を見ると、頬にほんのり色がついていて、僕は自分じゃないみたいだった。
次に立花さんは、透明なグロスを指先に取り、僕の唇にそっと塗った。
「ん……」
予想以上に近い距離に息が詰まり、無意識に声が漏れた。
ぷるっとした感触が唇に残る。
「似合う……葵くん、本当に女の子みたい」
その言葉は冗談じゃなく、真剣な声色だった。
胸の奥で、なにか小さな鐘が鳴ったような気がした。
「ねぇ、葵くん」
立花さんが少しだけ声を落とす。
「実はね、私……男の子の恰好をするの、ちょっと興味があったんだ」
意外すぎて、思わず顔を上げた。
「……え?」
「普段の自分とは違う自分になれる気がするなって思ってた。だから今回、男性の恰好をする事が出来て嬉しいんだ」
彼女の横顔が、妙に大人っぽく見えた。
その告白が、僕の心に火をつける。
──僕も、同じかもしれない。
ドレスを着た自分は、普段の僕じゃない。
恥ずかしいのに、嫌じゃない。むしろ少し……高揚している。
「……立花さんは、すごいな。僕は……なんか、変な感じで」
言いかけると、彼女はくすっと笑った。
「じゃあ、練習しよ。葵くんを、もっと可愛くしてあげるね」
その声に逆らえなかった。
立花さんは僕の腰に手を添え、ゆっくり歩くように指示した。
「スカートはこう、少し摘んでね。足は内側を意識して」
彼女の手が腰骨のあたりをそっと押し、正しい姿勢を教える。
「っ……」
そこが急に熱くなる。
──心臓が早い。こんなに近い距離で、立花さんの指が僕を触れている。
布の擦れる「シャリ…シャリ…」という音が耳に残る。
「上手。……もっと胸張って、笑って」
言われるたび、僕の顔は赤くなるばかりだった。
ふと、立花さんが立ち止まり、僕の前髪を整えるように触れた。
「……葵くん、こういうの、嫌じゃない?」
その声が、なぜか優しかった。
「……少しだけ、怖いけど……でも」
言葉が途中で途切れた。だって、それ以上言ったら何かが変わってしまいそうで。
立花さんはゆっくり微笑み、僕の頬に触れたまま囁いた。
「私ね、葵くんがドレスを着てると……すごく可愛いって思う」
その言葉に、息が詰まった。
──この気持ちはなんだろう。
ドレスの中で、僕は確実に“普通の男子”じゃなくなっている。
そして、立花さんの瞳も、僕を“男”として見ていないのかもしれない。
「文化祭まで、まだ時間あるし……もっと練習しようね」
その声が甘く残り、僕の胸の奥で何かがゆっくり沈んでいくようだった。
FANBOXでは週3回、新作をお届けしています
イラスト挿絵付きの連載作品を、週3回のペースで更新中です。
皆さまのご支援が大きな励みとなり、創作を続ける力になります。
ぜひFANBOXでの応援をよろしくお願いいたします!
Pixivでも作品を公開しています
文字コラ画像や、FANBOX投稿作品の冒頭部分を公開中です。
【メス堕ち・精神崩壊】“男”から“女”に──そんな背徳感が好きなあなたへ♡
気づけばイカされ、メスとして喘がされる…。
女体化・洗脳・アナル開発・精神崩壊など、
男性の尊厳が快楽で溶かされる“メス堕ち”コミックをFANZA同人から厳選!
【同人】15%OFFクーポン(07/11 11:59:59まで)も配布中です♪



