娘からの相談
娘の成長は、俺の想像よりもずっと早かった。
「お父さん、そろそろブラジャーが欲しいんだけど…」
母親がいない以上、俺がどうにかするしかない。小学生向けのものを選べばいい、それだけのはずだった。
しかし、ランジェリーショップの前に立った瞬間、足がすくんだ。甘い香りが漂う店内。ピンクや白に彩られた空間は、場違いな俺を拒んでいるようだった。
それでも意を決して入店をする。
「いらっしゃいませ!」
弾むような声に迎えられ、びくりと肩を揺らした。出迎えたのは、若い女性店員。あどけない笑顔とは裏腹に、俺よりもこの場に馴染んでいる。
「えっと……小学生向けの……ブラジャーを……」
最後の単語を口にするのが、こんなにも恥ずかしいとは思わなかった。俺は目線を泳がせながら、早く案内してくれと願う。
だが、店員は微笑んで首を傾げた。
「お嬢さん、初めてのブラですね?」
「えぇ……そうです」
「でしたら、まずはお父さまが実際に試着してみるのが一番ですよ」
俺は耳を疑った。
「え?」
「ご自身が感覚を知る事で、お嬢さんに合うものを選ぶ事が出来ます。最近はこういうこと、珍しくないんですよ」
珍しくない?男がブラジャーを試着することが?
「いや、でも……」
戸惑う俺をよそに、店員は淡々と話を進める。
「成長期のお子さんの場合、ぴったりのサイズを見つけるのが大事です。素材によっても着心地が違いますし……。ぜひお父さまが体験してみてください」
俺は何か言い返そうとした。しかし、それを許さぬほどの完璧な笑顔を向けられた瞬間、抵抗する気力が萎んでいった。
「……わかりました」
まるで他人事のように答えながら、俺は自分の耳を疑った。
試着室に案内され、手渡されたのは、淡い水色のブラジャーとショーツだった。繊細なレースが施され、少女らしい可憐さを漂わせている。
「着けたらお声がけくださいね」
カーテンが閉まる。密室。俺と、手の中の下着だけ。喉がからからに渇いていく。
……これは娘のためだ。娘のため。
自分にそう言い聞かせながら、震える手でシャツのボタンを外した。
冷たい空気が肌に触れる。恐る恐るブラジャーを肩にかける。
……ホックが、留められない。
背中に手を回し、何度も試みるが、指がうまく動かない。息が詰まる。喉の奥が締めつけられる。
「……くそっ」
小さく呟いた瞬間、カーテンの向こうから声がした。
「大丈夫ですか?」

店員の声が、やけに近くに感じられた。俺は返事をすることができなかった。
この時、彼は知る由もなかった。このランジェリーショップがTS女性向けランジェリーの販売推進店舗だと言う事を…。
黒色のブラとショーツ
娘と同じデザインの水色の下着。少女らしい花柄、彼女の成長をそっと彩る一着。レジで紙袋を受け取り、胸のつかえが下りた。父親として、やるべきことをやった。
「お嬢さんもきっと喜んでくれるはずです…」
彼女の声は甘く、誘うような響き。微笑みが心の隙間に入り込む。
「それでは……お父さまご自身の下着はどうされますか?」
「えっ?」
「お嬢さまの為に一生懸命頑張ったご自身にも、ご褒美をあげないと…」
「そ…そんなものは…必要ないので…」
紙袋を握りしめたが、喉が乾いていた。
彼女はバックヤードから黒いレースのブラジャーを取り出し、続けてペアのショーツを滑らせた。繊細なレース、透け感のある生地。少女らしさと誘惑が混じるデザイン。
「これ、セットで試してみません?お父さまの肌に映えますよ。…私が、ちゃんと見てあげます」
緊張で肩が震える俺を見て、彼女は目を細めた。
「お嬢さんの気持ちを本当に理解するには、お互いが普段から同じ様に過ごすのが一番。最近はこういうの普通なんですよ」
「いや、でも…」
言葉が途切れる。彼女の巧みな話術が俺の抵抗を飲み込む。
「と…とりあえず試着するだけでいいですよね…?」
「もちろんです!」
彼女の笑顔が完璧すぎて、逃げ場がない。試着室に導かれた。カーテンが閉まる。甘い香りが濃密に。鼓動が速くなる。
「シャツ、脱いでください。ゆっくりでいいですよ」
彼女は黒いブラとショーツを手に、俺の前に差し出す。
震える手でシャツを外す。彼女の視線が肌を這う。ブラを肩にかけ、指先が鎖骨をなぞる。身体が勝手に反応する。
「ホック、留めましょうか?」
吐息が耳元に。彼女の胸が腕に触れ、柔らかな感触が神経を刺激する。ホックが留まり、背中をなぞる指が抑圧を解く。
「ショーツも、ね?」
彼女が囁く。断れない。震える手でズボンを下ろし、ショーツを履く。レースが肌に吸い付き、冷たい感触が熱を帯びる。
「鏡、見て」
彼女の声が甘い。
ふと鏡を見ると、そこには…美しい漆黒のランジェリーに身を包んだ俺。黒いレースが少女のような可憐さと大人の誘惑を併せ持ち、男らしい輪郭を別人に変える。理性では恥辱的だ。こんな姿、父親としてありえない。なのに、心がキュンキュンする。知らない自分に、胸が締めつけられる。恥ずかしさが倍増し、顔が熱くなる。
「素敵ですよ」
と彼女が耳元で囁く。

「この感覚、覚えてて。自分を愛することの大切さを、お嬢さんにも教えてあげて」
娘のためだ。だが、心のどこかで別の声。俺のためだ。
俺は娘のブラと、自分の黒いブラとショーツを購入した。彼女は紙袋に名刺を滑り込ませ、「またお待ちしてます」と囁いた。
家で娘にピンクのブラを渡した。「ありがとう」と笑う彼女に、父親の誇りを感じた。だが、夜、寝室で黒いランジェリーを取り出す。レースの感触、彼女の吐息が蘇る。鏡の前で着ける。心がまたキュンとする。恥辱と興奮の狭間で、女装の沼が俺を引きずり込む。
翌週、俺は店を訪れていた。彼女の微笑みが待っていると、知っていたから。
ハマる女装沼、深紅の下着
俺はまた、あのランジェリーショップの前に立っていた。
ガラス扉の向こうから漂う甘い香りが、まるで俺を誘うように鼻腔をくすぐる。一週間前、初めてこの店に足を踏み入れた時は、娘のための買い物だと自分に言い聞かせていた。
だが、今、俺は娘の為ではなく、自分の為に下着を買いに来ている。初来店のあの夜、娘の下着と一緒に購入した黒い下着。それを装着して寝室で鏡の前に立った時の高揚感が、頭から離れない。
「いらっしゃいませ、お父さま。あらっ、今日は髪の毛、結んでるんですね…」
店員の声が、柔らかく耳に滑り込む。彼女だ。一週間前のあの微笑み。あの吐息。彼女の目は俺を捕らえ、まるで心の奥まで見透かすよう。白いブラウスから覗く鎖骨、タイトなスカートが描く曲線。彼女の存在自体が、店内の甘い空気と混じり合って、俺の理性を揺さぶる。
「また…来ちゃいました…」
言葉が喉に引っかかる。彼女はくすりと笑い、カウンターの奥から一歩近づく。髪から漂うフローラルな香りが、俺の鼻を掠める。
「ふふ、きっとまた来店なさると思っていました。今日は何をお探しですか?」
「えっと…何か、別の下着を試してみようかと…」
自分で言っていて、顔が熱くなる。こんな言葉を口にするなんて、俺は父親だぞ。なのに、彼女の視線に晒されると、羞恥が快感に変わる。彼女は目を細め、まるで獲物を品定めするように俺を見る。
「承知しました。今日は前回とは全く違ったものにしましょう。こちらへどうぞ」
彼女に導かれ、試着室へ。カーテンが閉まる瞬間、彼女の指が俺の腕を軽く擦る。
ゾクッと全身が震えた。渡されたのは、深紅のランジェリーセット。ブラの中央には小さなリボン、ショーツのサイドは細い紐で結ばれている。生地の滑らかさが、指先に吸い付く。シルクのような質感が、触れるだけで肌を甘やかす。
「着てみて下さい。ゆっくりで大丈夫ですから…」
彼女の声が、カーテンの向こうから響く。まるで俺の心を縛る呪文のようだ。震える手でシャツを脱ぐ。冷たい空気が素肌を撫で、鳥肌が立つ。ブラを肩にかけると、肩紐が鎖骨を滑り、ひんやりとした感触が全身を駆け巡る。ホックを留める。もう慣れたものだ。
背中に彼女の視線を感じる。実際には見られていないのに、まるで彼女の手がそこにあるかのようだ。
ショーツを履く。細い紐が腰に食い込み、肌に吸い付く感触が、羞恥と快感の境界を曖昧にする。鏡に映る俺は、まるで別人。深紅のランジェリーが、俺の男らしい輪郭を柔らかく、妖しく変える。胸が締めつけられる。こんな姿、誰にも見せられない。なのに、鏡の中の自分に目を奪われる。心の奥で、知らない自分が囁く。もっと、感じてみろよ。
「お父さま、着替えました?」
彼女の声が、試着室の空気を揺らす。カーテンがわずかに揺れ、彼女の影が垣間見える。俺の喉がゴクリと鳴る。
「う、うん…着たよ」
「見せてくださいね」
「っ……」
言葉に詰まる。だが、彼女の声には抗えない魔力がある。ゆっくりとカーテンを開ける。彼女の視線が、俺の全身を舐めるように這う。深紅のランジェリーに包まれた俺を見て、彼女は唇を軽く噛み、目を輝かせる。
「素敵…本当に似合っています」

彼女が一歩近づく。彼女の吐息が、俺の首筋に触れる。フローラルな香りが濃密に漂い、頭がクラクラする。彼女の指が、ブラの肩紐をそっと撫でる。柔らかな感触が、肩から背中へと電流のように走る。
「ここが可愛いんですよ……」
彼女がショーツのサイドの紐に指をかける。心臓が爆発しそうだ。羞恥が全身を熱くするのに、なぜか体が動かない。彼女の指が紐を引っ張ると、シルクが肌を滑り、冷たい感触が熱に変わる。俺の理性が、ゆっくりと溶けていく。
「お父さま、こういう艶やかな自分も、悪くないですよね?」
彼女の囁きが、耳元で甘く響く。鏡に映る俺は、深紅のランジェリーに身を委ね、彼女の視線に晒されている。恥ずかしい。なのに、どこかで心がキュンと疼く。この感覚、俺自身が欲している。
「ちなみに…当店はTS女性の方に向けたランジェリーの販売推進店舗なんです。お父さまはもっと下着が似合う体になりたいと思いませんか?」
「えっ…?それは一体?」
「下着を販売するのは勿論、TS女性になる為に、さまざまなサポートをしているんですよ?興味あるなら、お話しを詳しく聞きませんか?」
彼女はそう言い残し、試着室の外へ消えた。カーテンの揺れだけが、彼女の香りと共に残る。俺は鏡の前で立ち尽くし、深紅のランジェリーに包まれた自分を見つめる。心の奥で、彼女の言葉が反響する。
『下着の似合う…体?』
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