人生の決断
営業の仕事を始めて三年。僕はずっと底辺を這いつくばっていた。
毎月の成績表はいつも最下位。上司の叱責は日常茶飯事で、同僚たちの視線も冷たかった。転職を考えたことは何度もある。でも、僕にできる仕事なんて他にあるだろうか。そんな勇気はなかった。
ある日の飲み会で、同期の彼女にこぼした。
「俺、向いてないのかな……」
彼女は酔った勢いか、冗談交じりに言った。
「いっそ、性転換してみたら?女性の営業は受けがいいし、案外向いてたりして」
冗談のはずだった。でも、僕の胸にはなぜかその言葉が刺さった。
悩みに悩んだ末、僕は本当にそれを実行した。 手術を受け、ホルモン治療をし、女性の姿になった。
最初は自分の姿に戸惑った。鏡に映るのは、以前の冴えない僕とは違う、艶やかな女性だった。メイクを覚え、仕草を変え、ファッションを整えた。
すると、取引先の態度が一変した。
「華があるし、来てくれると嬉しいよ」
「営業のセンスがあるなぁ」
驚くほど簡単に、契約が取れるようになった。男だった頃、いくら努力しても振り向いてくれなかった取引先が、僕の言葉に耳を傾けるようになった。美しさが武器になるというのを、初めて肌で実感した。
気がつけば、営業成績はトップになっていた。 上司も僕を叱ることはなくなり、むしろ評価してくれるようになった。
収入は上がり、生活は安定し、気持ちにも余裕が生まれた。
そんなある日、友人から「いい人を紹介したい」と言われた。 会ってみると、彼はとても優しく、僕の過去も含めて受け入れてくれた。
「君が君らしく生きていることが素敵だと思う」
そう言ってくれた彼と、僕は結婚した。
人生がこんなにも変わるなんて、あの頃の僕は想像もしなかった。
だからこそ、僕は思う。
生き方に悩んでいるなら、性別の枠に囚われる必要なんてない。 もっと自由に、もっと自分らしく生きればいいのだ。
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