正義の味方!なのにこの姿!?ピンクの誓いと恥じらいの戦場

僕が街を守る!精霊との契約

怪人が現れたのは、夕方の駅前。買い物帰りの人々でにぎわう交差点に、異様な影が立ちはだかった。

背丈は3メートルを超え、触手のような腕がビルの看板をなぎ払う。その姿に、周囲の人たちは悲鳴をあげて逃げ惑った。

(くそ……誰か止めなきゃ……!)

僕は、ただの高校生だ。でも、心の奥にはずっと――ヒーローへの憧れがあった。

そんなときだった。

『正義の心、確認。今こそ、契約のときだよ!』

突然、頭の中に透明な声が響いた。街の喧騒が遠ざかり、僕の体が光に包まれる。

「ま、待って……えっ!何!?……!」

『安心して!君に怪人と戦う力を授けるよ!』

目の前で怪人とにらみ合っていたはずの僕が、突然光に包まれ、変身が始まった。

ビリッと何かが弾けた感覚のあと、洋服がスッと消え、代わりに肌を滑る冷たい質感が僕を覆った。

「……えっ……これ、ちょ……な、なんだこれっ……!?」

ふわりと舞い降りるスカート。レースのついたパフスリーブ。胸元には大きなリボン。足元は艶やかなエナメルのヒール。太ももにはサテンのガーター。鏡に映った自分に、思わず息を呑んだ。そして鏡のようなビルのガラスに映ったのは、ピンクのツインテールを揺らし、グロスで艶めく唇を引き結んだ……“魔法少女”。

「え……?僕……?」

ざわざわと、周囲のどよめきが肌を刺した。

「男の子じゃない?」
「うそ……あの子、変身したよね?」
「え、ちょっと、カワイイ……でも……なんで……?」

(やめて……そんな目で見ないで……!)

頬が、焼けるように熱い。体のラインがはっきり浮かぶコスチューム。スカートの下に吹き込む風が、太ももを撫でた。胸に触れると、ふわりと柔らかい感触が指に返ってきて――思わず息を呑む。

「うそだろ……なんで、僕が……ヒーローじゃなくて……魔法少女に……?」

街中の人たちが僕を見ている。撮影してる。笑ってる。驚いてる。中には、目を逸らさずにじっと僕の脚を、腰を、胸元を見てる人もいた。

(恥ずかしい……恥ずかしい……でも……でも……!)

目の前の怪人が吠える。街の人々が、また悲鳴をあげる。

僕は、震える手で魔法のステッキを握った。

「こ、こんな格好でも……僕は、街を……みんなを守らなきゃ……!」

ピンクのスカートを押さえて、一歩踏み出す。その瞬間、ふわっと甘い香りがツインテールからこぼれた。

(あぁもう、なんなんだよこの匂いっ……!)

でも、それでも逃げなかった。

僕は、正義の味方になりたかったんだ。たとえどんな姿でも。

そのとき、怪人が一歩前に出た。にやりと笑ったその顔は、僕の姿を見て明らかに油断している。

「なによ、そっちがその気なら……容赦しないんだからっ!」

口から、勝手にそんなセリフが出た。

(ちょっと!?何この喋り方!?)

僕の羞恥は、まだまだ終わらなかった。


堕ちる、誓い

僕が初めて魔法少女になった日から半年ほどが経過した。

ビルの屋上で風に煽られながら、僕は膝をついた。ピンクのスカートが汗ばんだ太ももに張り付き、コルセットの締め付けがやけに意識にのしかかる。

連日の戦いに、身体は限界に近かった。

変身するたび、体力が削られ、心もどこかすり減っていく。最初のころは、ただ“街を守る”という使命感だけで動けた。でも今はもう、自分が何者で、どこに向かっているのかさえ──ぼんやりとしていた。

(みんな、何も知らないで……応援してくれてるけど……)

初めて魔法少女になったあの日から、毎日の様に変身をして戦い、心も体も女の子みたいな言葉遣いで、馴染んでしまっていた。

けれど、それでも引き返せなかった。

「これが……わたしの……役目……っ」

そんな呟きが風に溶けたときだった。

ドシュン──ッ!

突如、背後から飛来した黒い触手が、僕の身体を容赦なく締め上げた。

「きゃっ!?……く、苦しい……っ!」

ピンクのリボンが弾け、スカートがめくれ上がる。ヒールが地面に転がり、パフスリーブに裂け目が走った。

(罠……だったの……?)

意識が遠のく中、聞こえたのは怪人たちの不気味な笑い声だった


目覚めたとき、僕は薄暗い部屋の中にいた。

コツン、コツン……

ヒールの音が静寂に響く。

「う……んっ……ここ、どこ……?」

目の前には黒いローブの怪人。背丈は成人男性ぐらいだろうか。彼は仮面越しに言い放った。

「我々の組織と対峙してわかっただろう?こちらには同士がまだまだ大勢いる。それに対してお前は一人だけ。契約の使い魔も今や姿を現さない。そこでお前に一つ、取引を提示しようと思う」

「と…取引……?」

「その身体と力を差し出せ。そうすれば我々はもう街に手出しはしない。それが“取引”だ」

「身体…?何をすれば……?」

「わざわざ言う事もなかろう…。どうだ、今だけお前が我慢すれば、この苦しみから解放される…」

……否定をしようとしたが、口からは出なかった。迷いなんて、本当はなかったのかもしれない。
すでに体も心も限界を迎えていた。
──わたしは、契約を受け入れた。

(戦わずに……街が守れるなら……)

――取引の儀式は一瞬だった。わたしの体からは力が無くなり、元の男子高校生に戻った。残されたのはコスプレと化した、ただの魔法少女”風”の衣装と、女性化してしまった自分の心。

「安心しろ、我々の目的もう達成された。もう街を襲う事はない。だが、約束は守って貰うぞ」

彼の言葉が胸に突き刺さる。街を守るため、わたしはこの取引に応じた。正義のために、嫌々屈辱を受け入れたはずなのに……なぜ、心の奥で疼くこの感覚は、羞恥と一緒に熱を帯びていくのだろう?

「んっ……や、やめて……そんな目で見ないで……」

わたしの声は震え、女の子のそれだった。もう魔法少女でもなんでもない、ただの男子高校生に戻ったはずなのに、言葉遣いも、心も、魔法少女のまま。鏡の前に引きずられ、ガラスに映る自分の姿に息を呑む。たくましい肩幅、なのに華奢な腰つき。髪は乱れて頬に張り付く。甘いフローラルの香りが鼻腔をくすぐり、頭がクラクラする。

(こんな姿……元々、望んでいなかった……でも、今はなんで……ゾクゾクするの?)

彼の手がわたしの顎を掴み、顔を上げさせる。冷たい指先が肌を滑り、背筋に電流のような快感が走る。嫌なのに。抗いたいのに。体が熱くなる。

「お前のその顔、嫌いじゃないぜ。もっと見せてみろよ」

彼の指がコスチュームの胸元に伸び、リボンを解く。サテンがスルッと滑り落ち、肌に空気が触れる。胸は男の平坦なものに戻っているはずなのに、なぜか柔らかい感触が残っているような錯覚。ゾクゾクと震える肌に、自分の鼓動が響く。

「やっ……触らないで……!」

叫ぶ声は、どこか甘く掠れる。彼の笑みが深まり、吐息が耳に届く。彼の視線が、わたしの太もも、腰、首筋を這う。まるでわたしの羞恥を味わうように。

(こんな姿…本当は男の子なのに……!)

体が熱い。心が濡れるような感覚。スカートの裾を握りしめる手が震え、指先がサテンの滑らかな感触に吸い付く。嫌なのに。こんなの、僕じゃないのに。

「ふぁっ……!」

彼の手がわたしの熱い部分に絡みつき、ヌルリとした感触が肌を這う。ゾクッと全身が震え、拒絶したいのに体が反応してしまう。

(やめて……そんなこと…感じたくない……!)

彼に手はさらに激しさを増し、頭がぼうっとする。嫌なのに。抗えない。この体が、女の子のように反応してしまう。

(僕……こんなの、望んでなかった……でも……)

体が熱くなる。羞恥と快感が混ざり合い、心が溶けていく。鏡に映る自分――男の体に、魔法少女の心。どちらが本当のわつぃなのか、わからなくなる……。

* * *

――数時間後。
僕は開放された、後に残ったのは平穏を取り戻した静かな街と、魔法少女のコスプレをして今日も快楽を求める、一人の少年だった……。


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