レンタル衣装屋の畳敷きの試着室に入ったとき、俺は胸を高鳴らせていた。
今日は地元の夏祭り。親友と2人で浴衣を借りて、女の子をナンパしようと考えていた。
そんな軽い下心を抱えていたのに、店員さんが申し訳なさそうに差し出された浴衣を見た瞬間、息が止まった。
「あのー…こちらになるんですけど…」
店員の手から受け取った浴衣は、どう見ても女物だった。
白地に淡いピンクの模様が散らされ、女の子が着ていたら可愛い浴衣なのだろう。
「すみません、お客様がHPからご予約を頂いた際に、女性でチェックをされた様で…。お名前も男女どちらでもありえるものでしたので、てっきり女性だと……。でもサイズは合いそうですし、もしよければメイクもサービスも致しますので、良ければ着てみませんか?」
申し訳なさそうに微笑む店員の声に、「いやいや、ありえない!」と拒絶する。
「ごめん、俺が予約した時にチェックを間違えたのかな……。でもお前なら似合うと思うけどな」
隣の親友も申し訳なさそうにに囁く。
やめろよ、と小声で返しながら、改めて浴衣に目線をやる。
「男物の浴衣はもうないんですか?」
「あいにくご予約で埋まってしまって……」
「でも可愛い系の男も流行ってるし、案外、逆に目立っていいのかもよ?お前は背も低いし色白だから絶対に似合うし」
「………」
――確かに予約を全部親友に任せてしまっていた俺にも落ち度はある。それに「似合う」という言葉が、頭の奥でこだましていた。
結局俺は、鏡の前に座らされていた。
「ぽんぽん」パフが頬を叩き、ファンデが肌に溶け込む。
「ふわっ」と漂う甘いパウダーの香り。
まつ毛をマスカラで撫でられるたびに視界が揺れ、唇に乗せられた紅い艶が、呼吸まで甘く変えていく。
ウィッグをかぶせられ、耳元で髪がさらりと落ちる瞬間――俺は鏡の中の“女の子”に息を呑んだ。
そこに映っているのは、俺じゃない。けれど、どこから見ても可愛い誰か。
「ヤバい!めっちゃ似合ってるよ!俺の思っていた通りだよ!」
「そ…そうか……。ありがと…」
俺たちはそのまま夏祭りの会場へ向かった。さすがに子の恰好で一人では外を歩けないが、こいつが横にいるから何とか外出する事ができた。
「カラン、コロン」
下駄を鳴らしながら夏祭りの夜道を歩く。
裾がふわりと広がり、素足に触れる布の感触がこそばゆい。
兵児帯に締められた腰は不思議と細く、歩くたびに首元からふわりと甘い香りが立ちのぼる。
仕上げに…とかけられた爽やかで女性らしい香水の匂い。
視線を感じる。男も女も振り返る。
羞恥で胸が焼けるようなのに、なぜか頬が緩んでしまう。

石畳で「ぐらり」と足を取られた。
「キャッ」思わず漏れた高い声に、自分で息を呑む。
次の瞬間、親友の手が俺の手を包み込んでいた。
「大丈夫?転ばない様に手を握っててやるよ」
その笑顔に、胸がドクンと鳴った。
……実は俺も気付いていた。
親友が予約の時点で、俺の性別を「女」でしていた事を。
レンタル衣装屋に入った瞬間、店員と目くばせしていた事も。
最初から全部仕組んでいたのだろう。
俺を“女の子”にするために。
それでも俺は“女の子”を受け入れてしまった。
俺はそっと手を握り返し、震える唇でつぶやいた。
「あたし、綿菓子食べたいな」
――その声を聞いた彼の瞳が、一瞬だけ熱く揺れた気がした。
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